『ひらいて』 綿矢りさ


ひらいてひらいて
(2012/07/31)
綿矢 りさ

商品詳細を見る


やみくもに、自分本位に、あたりをなぎ倒しながら疾走する、はじめての恋。

彼のまなざしが私を静かに支配する――。華やかで高慢な女子高生・愛が、妙な名前のもっさりした男子に恋をした。だが彼には中学時代からの恋人がいて……。傷つけて、傷ついて、事態はとんでもない方向に展開してゆくが、それでも心をひらくことこそ、生きているあかしなのだ。本年度大江健三郎賞受賞の著者による、心をゆすぶられる傑作小説。(新潮社HPより)


彼の瞳。
凝縮された悲しみが、目の奥で結晶化されて、微笑むときでさえ宿っている。本人は気付いていない。光の散る笑み、静かに降る雨、庇の薄暗い影。


この話の冒頭。
そんな瞳の彼、“たとえ”に、恋している主人公の“愛”。
たとえの机の引き出しにしまってあった手紙を読み、恋人の存在を知ってから、愛の行動は軌道をどんどん外れて行った。
たとえの恋人の“美雪”に接近し、友達以上の関係にしていく。
しかし、ふたりの絆はそんなことではビクともしない。
更に苛立ち、愛の行動はエスカレートしてゆく。

綿矢りささんの作品に出てくる女性は、恋愛に対して不器用な人が多い。
外見はそこそこいいのに、自ら辛い状態にもって行く。
それだけ自分に嘘がつけないからからだろうか?

好きな相手の彼女を寝取るなんて、やっていることは、さすがにおかしい。
でも、なぜか批判できない。
気持ちがよくわかるからだ。

若年性の糖尿病を患っている、美雪。
家庭に問題がある、たとえ。
お互い、他人には理解できない辛い立場であるからこそ、深い絆で結ばれている。
その間に、無理やり押し込んでくる愛。
どうしてそこまでするのか。
受験生であることさえ忘れて…
愛をそこまで動かすものは何か。

私は神様なんか信じない。でも信じられないのに、なにかを信じなければ、やっていけない。“なにも心配することはない。あなたは生きているだけで美しい”と丁寧に言い聞かせてくれる存在を渇望し、信じきりたいと望んでいる。


                       by 蜩
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

やみくもに、自分本位に、あたりをなぎ倒しながら疾走する、はじめての恋。彼のまなざしが私を静かに支配する――。華やかで高慢な女子高生・愛が、妙な名前のもっさりした男子に恋をした。だが彼には中学時代からの恋人がいて……。傷つけて、傷ついて、事態はとんでもない方向に展開してゆくが、それでも心をひらくことこそ、生きているあかしなのだ。本年度大江健三郎賞受賞の著者による、心をゆすぶられる傑作小説。 ...

2013/11/22 (Fri) 15:29 | 粋な提案
蜩の最近読んだ本