fc2ブログ

天国からの手紙

今週の木曜日のこと。
仕事中に旦那から電話があった。
「島根の美○子から電話があって、姉から手紙が来たって言っとったぞ」
???
島根の美○子さんとは旦那の姪っ子で、姉と言うのは旦那の一番上の姉で5年前に亡くなっている。
亡くなった人から手紙が来たって?

よく聞くと話はこうだ。
義姉が住んでいた町が合併し、○○市になることに決まった10年前、町のイベントでタイムカプセルを作ることになり、その中に入れる手紙を町民から募集したのだった。
そのタイムカプセルが10年後の今年2月に開けられ、その中にあった義姉の手紙が孫に当たる美○子さんの娘の麻○子さん宛てに配達されたのだ。
実家の近くで暮らす美○子さんは、まさか母がそのタイムカプセルに手紙を入れているのなど知る由もなかったため、見慣れた母の字で書かれた手紙が届いた時にはたいそう驚いた。
そしてその手紙を読み、その中に黒猫のことも書かれていたので旦那に電話したということだった。

仕事中だったため詳しくは聞けず、ただビックリしたことだけ告げて電話を切った。
へ~義姉もしゃれた事をしたんだなぁと、その時は軽い気持ちで良かった良かったくらいしか思っていなかった。

そして今日、美○子さんから私へメールが届いた。
「Yちゃん(旦那)から手紙のこと聞いた?」と。
ちょうど整形外科でリハビリを受けていた時だったので帰ってから電話をしようと思った。


その前に説明しておきます。
美○子さんは旦那の姪っ子ですが年齢が近いため、妹のような存在です。
そして私より9つ年上で、娘の麻○子さんは黒猫より7つ年上。
義姉には大変お世話になって、一番下の姪っ子の黒猫を孫のように可愛がってくれました。

その義姉が亡くなる前、具合が悪くなり入院するようになってから、義姉の家族によくない空気が流れだしました。
義兄の暴言、被害妄想が酷くなり、また義兄と息子が結託し、娘の美○子さん家族に面会をさせないようにしてしまいました。
旦那や他のきょうだい達が説得してもダメでした。
なんとか義兄の眼を逃れてこっそり会いに行ってはいたようですが、本当なら母の世話をしたいのにできないもどかしさで精神的にもかなりのダメージを受けていたようです。しかも実の父親と弟からの仕打ちなので余計に辛かったと。
結局、自由に会えるようになった頃には義姉はもう話もできないまでに衰弱していました。
そして、5年前の3月11日に息を引き取りました。


今日の電話で手紙の内容を教えてもらった。
募集があった手紙のテーマは『私の宝物』
書かれた年月日、時間のあと
≪今日も朝から頭が痛いです。
私の宝物について書きます。私の宝物である麻○子ちゃん。大好きな大好きな麻○子ちゃん。
小さいころから大事にしたおかげでとても良い子に育ってくれました。
(略)
この手紙を読む頃にはボケてみんなに迷惑をかけているか、もしかしたらもう死んでしまっているかもしれません。
そしたら先に天国に行ってるおじちゃんたちと一緒に手を振るから麻○子ちゃんも空に向かって手を振ってください。
(略)
●ちゃんや△ちゃん、黒猫ちゃんと仲良くしてあげてください。
そしてお母さんやお父さんを助けてあげてくださいね。・・・・・・≫
一度しか聞かなかったので、ちゃんとした文章ではないけれど、聞きながら泣いてしまった。
手紙の中に出てくる人物は、美○子さん家族と●ちゃんや△ちゃん(姪っ子とその子ども)と黒猫だけ。
夫である義兄や息子やその子ども(孫)のことは一言も書かれていなかった。
自分の一番大事な人しか書かなかったんだろうと美○子さんは言っていた。
まるでその後のことを予言してたみたいな文面に少々驚き、遺書とも受け取られる内容に美○子さんは、
「最期に本当に言いたかったことが書かれているみたい
これでやっとほっとできる…」と。
義姉が亡くなる寸前、美○子さんの顔をじーっと見つめていたそうだ。
何かを言いたそうに…

実は美○子さんと旦那は義姉の葬儀の後、ちょっとした行違いでお互い連絡を取らずにいた。
それでも黒猫は、
「親同士が仲悪いのと私は関係ないから美○子さんとこ行くからね!」と夏休みに泊まりに行った。
私も一応報告だけはしたけれどそれ以上はなにも言わなかった。
すると、今年に入って旦那が美○子さんに電話を入れたそうだ。
夏休みに世話になったお礼を言ったらしい。
しかも、電話したことは私と黒猫には内緒にしてほしいと。
それから二人のわだかまりは解け、時々電話のやりとりをしているらしい。
「あの電話が無かったら、今回のことでYちゃんに電話することも無かったやろうね。」
と美○子さん。
まるで義姉が二人を仲直りさせたみたいな気がする。

「なんか、複雑な気持ちやわ」と麻○子さん。
手紙の中で初めて名前で呼んでもらった美○子さんの旦那さんは
「自分のやってきたことは間違ってなかったんだ」と自信を持ったらしい。

手紙とは、普段口にするには恥ずかしい事が言える場所。
心に秘めた言葉にできない思いを伝える道具。

天国から届いた手紙は、残された者たちの心を少し軽くしてくれたのだろうか…
いや、逆にもっと重くしたかもしれない…かな?


                         by 蜩
スポンサーサイト



コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

蜩の最近読んだ本